Focus

たった一言言うのでさえ、心臓はバクバクいってるし、もしかしたら顔が赤いのに、沙那さんからしたらなんてことないんだ。

「ふふ。赤くなってかわいい」


「あんまり見ないでくださいよ。すっごく勇気を出して言ったんですから。それにカワイイなんてナシですよ。男なのにそんなこと言われても困ります」


「そういう所もかわいいのに。自分じゃ、わかんないわよね。あ、オーダーお願いします」


近くを通った店員に注文をはじめた。本当なら、スマートに女性をリードして注文だって男の俺がしたほうがいいだろうけど、沙那さんはそんなこと気にせずに自然にこなしてくれる。


本当、大人だ。

自分も、もうちょっと頑張らないと釣り合わない。


いつかこんな店で、夜のディナーをお洒落した沙那さんと食べる日が来るんだろうか。

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