いい加減な恋のススメ
それよりも彼は何て返事をするんだろう。いや、断るほか何もないはずなんだろうけどあの人のことだからもしかしてってこともあるし……
そうなったら私が止めに行かなきゃ駄目で、でもそれは私には関係なくて、あれれ、どれが正解なんだろう。
と、
「ごめん」
その声にドキリと心臓が跳ねた。
「流石に俺でも教え子に手は出せねぇわ」
「あ、……」
「それに俺は全員を平等に見たいし、お前だけ特別っていうのも無理な話だ」
あのいい加減な彼が生徒を傷付けないようにしているのが分かる。あの人はきっとこの仕事が好きで、生徒たちのことも好きで、それで彼らのことを1番に思ってる。
ただそれは教師として当たり前なのに、なんで私は安心してしまっているんだろう。
「(忘れるんだよ、私は……)」
あの人のことなんて、全部。
「つーか、こんなおっさんと付き合ってもコソコソするだけで絶対直ぐ飽きるって」
「そ、そんなこと……」
「いやいや本当、お前は経験無いだけ」
幸澤先生は茶化すようにして笑った。
「学生は学生らしい恋愛すんのが1番だぜ」
「……先生」
「お前が自分のこと大事にしてぇなら尚更な」