いい加減な恋のススメ
彼のせいで無駄に時間を食ってしまった。
かなり慌ててそのお店に入るとお目当ての人物を探す。
「安藤さん」
その声は直ぐに掛かった。声の持ち主の方を見ると私は急いでその席へと駆けた。
「ご、ごめんなさい小田切先生」
「大丈夫、俺も今来たところだから」
「……」
そんなの彼の優しさだとは分かっているけど。私はさっきのことがあってか、彼のそんな言葉にキュンと胸がときめかされる。
私は彼の目の前の席に座ると再度「遅れてすみません」と謝罪を入れる。
「なんか色々あって」
「……幸澤先生?」
「は!?何で!?」
「また何か頼まれ事されたのかなって。断れないんでしょ」
「……」
それは確かに図星だけど。
私は激しく顔を横に振るとテーブルを叩いて小田切先生に呼び掛けた。
「今日はもう、あの人の話するのやめましょう」
「(いつもしてくるの安藤さんなんだけどな)……あー、うん。分かった」
「(忘れるんだもん……)」
ていうか忘れたい、こんなにあの人が原因で苛々してしまうこと理由も気付かなくていいから忘れたいんだ。