いい加減な恋のススメ



ちょいちょいとご飯を食べながら言葉を紡ぐ。


「なんか生徒と話すとき緊張しちゃって、距離を置いちゃうみたいな。最後の週に公開授業とかあって先生たちの前で授業することになってるんですけど」

「へぇ、凄い」

「でも私、川西先生やリック先生みたいなコミュニケーション能力持ってないから生徒たちと上手く話せなくて」


このままじゃ駄目なんですけど、と私の声はドンドンと小さくなっていく。
昔から緊張しいなところがあるのは知っている。昔習っていたピアノの発表会では練習までは完璧に弾けていたのに本番では楽譜を度忘れしてしまったりしていたぐらいだ。

ただ毎回のように失敗する訳じゃない。しかしその失敗が今回に起こるんじゃないかと心配になってしまうんだ。
ちゃんと努力はしてきたのにいざとなったらネガティブになってしまうのが私の悪いところだというのも自覚している。

昔父に言われた、「お母さんとよく似てる」と。


「でも、大丈夫だよ。だってまだ時間がある。文化祭の準備もあるんだし、生徒との仲も深まるよ」

「……そうだといいんですけど」

「それに生徒と頑張って話してる安藤さん見てると何だか癒されるよ」

「え?」


それはどういう?、と首を傾げると彼は「何でもない」とチューハイを飲んだ。



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