いい加減な恋のススメ
「あの日、とは」
「……皆で飲みに行ったとき」
あぁ、私が酔い潰れて最悪だったあの日か。確か酔い潰れる前に小田切先生と話していたことは覚えている。それなのにその内容は覚えていなくて、私は「えっと……」と戸惑って頬を掻いた。
小田切先生は「あの時ね、」と口を開くと、
「安藤さんの彼氏に立候補しようかなって言ってたの、覚えてない?」
彼はいつもの優しい笑顔じゃない方の笑顔で笑った。
しかしその言葉を受けた瞬間に私はハッとあの日の夜のことを一気に思い出した。
そうだ、幸澤先生が登場する前に小田切先生にそう言われて戸惑ったのを覚えている。
私は混乱しながらも彼の方を見た。
「で、でもあれって冗談だったんじゃ……」
「冗談だったら今こんなに頑張ってないよ」
「頑張る?」
「安藤さんを振り向かせるために」
「……え!?」
反応遅めに声を上げると「やっぱり伝わってなかったんだ」と彼は困ったように笑った。
全くそんな気なんかないように思えてたからどれだけドキドキすることがあっても勘違いしないようにしてたのに。
「ええっと、ごめんなさい。私疎くて」
「うん、鈍感だなって思ってた。気を付けた方がいいよ。男ってそういうところ狙ってるから。俺みたいに」
「うえぇ、て、ていうか私のこと……」
「うん、好き」
さらっと言われて私は更に驚きを隠せなくなる。