いい加減な恋のススメ



「あ、の……や、……」


どうしよう、返事しようにも驚きすぎて言葉が続かない。
私がそう戸惑っていると目の前に立っていた小田切先生がクスッと笑ったのが見えた。

と、


「なんて」


彼のその言葉に軽く頭に星の欠片がぶつかったような衝撃を受けた。

"なんて"、とは。


「な、なん?」

「なんちゃって、吃驚した?」

「……」





吃驚したよ!

私はその言葉の意味が理解できると恥ずかしすぎて顔を両手で覆う。死にたい、全力で死んでしまいたいよ。


「ごめん、本気でからかっちゃった」

「そうだね、本気のからかいだったね」

「あまりにも安藤さんが色々悩みを抱えてる上に俺をいい人とか言うから、驚かせて忘れさせようかなって思ったんだけど」

「うぅ、理由が優しくて怒るに怒れないよ」


そうだよね、小田切先生が私のことなんて、そりゃない話だ。
彼は「じゃ、先に進みましょ」と自転車を押し始めた。

すると、


「でも、ほら……吃驚しすぎて敬語抜けた」

「え、……あ」


本当だ、気が付いたら使っていなかった。



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