いい加減な恋のススメ
良かったね、と良かったのかは分からないが彼にそう言われたので頷く。
今までにないぐらい焦ってしまった、不覚。それによく考えたら私男子に好かれたことですらないのに疑いすらなかったというところが既に痛い。
小田切先生はそのままの調子で私のことを駅の方まで送り届けてくれた。
この人、ただ優しいだけじゃなかったんだな。あんな真剣に嘘を付けるんだ。
「送ってくれてありがとう」
「どういたしまして、気を付けてね」
「……」
「ごめんごめん、もうからかわないって」
「……」
昔から真面目すぎてからかわれることもあったけどこれは酷いよ、小田切先生じゃなかったら許してないよ(つまりもう彼のことは許している)。
私は「絶対だよ」といつか彼に可愛くないと言われた仏頂面をすると彼に背中を向けた。
と、その瞬間に後ろから腕を取られた。
「と、いう嘘なんだけど」
そんな声が耳元で聞こえる。
「なんちゃって」
小田切先生が至近距離でそう微笑んだ。まさか、と私は唇を震えさせる。
「告白の返事、また聞かせてね」
「っ……な、」
やはり、吃驚するどころの話ではない。