いい加減な恋のススメ



いやいや、まさかこの私に?色気すらもない私の後をつける男がこの世に?
私はそう自分に言い聞かせながらも再び歩き始める。が、やはり私が歩き出した瞬間に鳴り始める足音が気になって仕方がなかった。

あぁあぁ!もう!無理!

私はそう思うと思いっきりコンクリートの地面を後ろに蹴った。走りには自信がある。高校の頃は陸上部の誘いを受けたぐらいだ。
心の中で「うわぁあぁ!」と情けない声を発しながらも必死に走った。それなのに何故か足音の音がドンドンと大きくなる。

向こうも走っている、しかも速い。速すぎる。
あぁ、大学の頃って勉強勉強でサークルにも入ってなかったから全く運動をしていなかった。それなのに急に走って高校の時のレベルの走りが出来るとかどこにそんな確証があったのだろうか。

足音がもう側にまで聞こえてくる。ひゅっと胆が冷えた。

恐怖のあまりに私の足の動きが緩んだその時、顔の目の前に大きな手のひらが現れた。

と、


「お前、ふざけんなよ」

「っ……んん!?」


口元を覆われて大声を出そうと思ったら耳元で聞きなれた声が聞こえた。
涙目で後ろを振り返るとそこにいた人物は呆れたように溜め息を付いていた。

なんで、この人が……



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