いい加減な恋のススメ
なんだ、それ。なんだそれなんだそれなんだそれ。私が何をしたっていうんだ。
そんなの勝手に苛々されても困るし、こっちだって苛々しているのに。
なのに、何で……
何で涙が出そうになるくらい傷付いてるんだろう。
「そうやって無防備なところ腹立つ」
「……」
え?、と顔を上げると彼は私の腕を掴んだまま歩き出した。ズンズンと進む彼は私の家へと曲がる角すら無視して進む。
「あ、あのっ……幸澤先生?」
「……」
「……?」
いつものいい加減な雰囲気を漂わせない彼の背中に私は反発が出来なくて彼に合わせるようにして足を動かす。
どうして私はいつも、この背中を追いかけてしまうんだろう。何があっても勉強の方を優先してしまう私が、どうして彼のことになると何も言えなくなってしまうんだろう。
それは、彼が私の勉強よりももっと奥に……それはそれは奥に潜んでいるからだ。だから、忘れようとしても忘れられないんだ。
―――「もしかしてさ、何かがストッパーになってるってことはない?」
「ストッパー?」
「本当は小田切じゃなくて、違うものが気になってるとか」
嫌だ。
―――「それは幸澤先生の言葉の方が最優先だと安藤さんの中で無意識に思っちゃってるからじゃないかな」
嫌だ。
「(……なのに、)」
嫌なのに。