いい加減な恋のススメ
ガチャって開かれた扉の向こうは真っ暗で、彼はその扉を開けたまま動きを止める。
ここ、幸澤先生の部屋、だよね。
「あ、あの」
「入れ」
「っ……はい」
私はおずおずと言われるまま彼の部屋に足を踏み入れた。その瞬間、煙草の匂いが鼻を擽る。あ、やっぱり幸澤先生の部屋だ。
と、
「お前、本当馬鹿だな」
後ろでそんな言葉が聞こえた瞬間、強く音を立てて玄関の扉がしまった。
部屋が光を失って暗闇に包まれる。それが急に不安になって慌てて後ろを振り向いた。
「こ、幸澤せん」
「お前さ」
姿が見えない彼に言葉を被せられた。
「男の部屋に入るって意味分かってんの」
あ、近い。そう思った時にはもう遅かった。
「ん……」
唇が重なっていた。
「ん、っ……や」
「……、」
「っ……は、……せんせ」
重ねられたそれは私の唇を弄ぶかのように啄んだ。
どうしよう、私今キスされちゃってる。だけど逃げようにもいつの間にか腰に手を回されてて動けなくされてる。
「……んぅ……」
キスなんてしたことが無かった私はそれが突然すぎて対応することが出来ず、彼の唇を受け止めることしか出来ない。
私、今幸澤先生にキスされてる。