いい加減な恋のススメ
もし私の中から彼がいなくなってしまったとすると、私は何を目標しこれからを過ごしていけばいいんだろう。一体私に何が残るんだろう。
「っ……」
心が、体が、本当は彼から解放されるのを拒否している。彼に手を伸ばしてしまいそうになる。
小田切先生がいるのに。
体が動かない、私はぎゅっと瞼を閉じる。するともっと近くで彼の匂いが香った気がした。
「……は」
「何」
「幸澤、先生は……」
「……」
「……私のことが好きなんですか?」
どうしてあの時私のことなんか抱いたの。教え子には手を出さないんじゃなかったの。私は、彼にとって教え子にも思われていなかったんだ。
そう思うと胸がぎゅっと苦しくなった。いつだって彼の背中が目の前にあることによって私の進むべき道は決められていた。
どこかでとても楽だなって思ってしまっていたんだ。
体が軽く持ち上がる感覚がする。彼は顔を近づけて最高に嫌味ったらしい微笑みを見せた。
「さぁ、どうでしょう」
彼の背中を見失うのが怖い。