いい加減な恋のススメ
流されて流されて、そして彼の手に堕ちてしまう。どこかで似たような感覚を味わった記憶がある。
だけど駄目なんだ、私にはこの人が必要なんだ。私がこれからも前に進むためには彼の存在が私の前にいないと。
いつまでも追い掛けていないと。
「……ん、っ……ぁ」
ビクッと彼に体を触られる度に反応してしまう。いつかの夜のことが今になって思い出されてきてしまった。
「っ……ん、やぁ……」
「……安藤」
「や、だ……」
「もう遅い」
もう遅い、あの時逃げなかった私が悪い。逃げずに彼を求めてしまった私が悪い。
知らなかった、こんなにも私は深いところまで足を踏み入れてしまっていたなんて。もう後戻りできないくらいまで彼に侵食されてしまっていた。
どれだけ彼のことを忘れようとしても、消そうとしても、諦めようとしても、それでも彼が現れてしまうのはきっと彼がもう私の中に巣を張ってしまっていたからなんだ。
今さら逃げようとしたって、もう手遅れだったんだ。
「感じる?」
「っ……あ」
「……」
「……幸澤、……先生なんか」
「……」
あぁ、いつもだったらこの台詞普通に言えているのに。何だかとても重く感じてしまう。
するとそんな私の代わりに彼が言った。何やら寂しそうな笑顔だった。
「大嫌い、だろ?」