いい加減な恋のススメ
「はぁ?俺の家なんだから俺がどんな格好でいようが自由だろ」
「こ、幸澤先生の家だとしても今は私がいるじゃないですか!」
「そういうの気にしねぇし」
じゃあもう貴方の家とか何も関係ないですね!、と私はずっとドアの方を向きながら言っていた。
するとトントンとこちらに幸澤先生が歩いてくる足音がしてきて、私は慌てて再び手をドアノブに掛けた。
が、時既に遅し。その手は後ろから伸びてきた新たな手によって妨げられてしまった。
「それに、」
まるで唇を耳に付けているかのような近さで囁かれる。目の前で絡まれる指にまた1つ1つ熱を帯びていくように思えた。
「昨日も散々見たじゃん」
「っ……は、」
クスリと彼が笑ったのを空気の波で感じる。シャワー浴びた後だからか彼の湿った髪の毛が頬に触れ、体から発せられる熱気が直接肌に伝わった。
駄目だ、このままでいたら気が変になりそう。
「や、やめてください!そういうこと!」
私は力一杯ドンッと彼のことを弾き飛ばした。一瞬怯んだ彼は直ぐ様怪訝な表情に変わる。
「そういうことって、事実だろ」
「っ……だ、だから……あの、その……」
帰ります!、と彼に背を向けると凄い勢いで彼が玄関扉を押さえ付けた。