いい加減な恋のススメ
「何で帰んの」
そう冷たい目で見つめられる。私はこの目が苦手だ。この厳しい目付きをされると体が動かなくなる。
昨日の夜はもっと柔らかかったのに。
「きょ、今日も学校があるからですよ。家に帰って着替えなきゃいけないし」
「あぁ、それなら車で送るわ。それにそのまま学校行けば楽だろ」
「な、何考えてるんですか!?」
私にそう反撃されたのが気に食わなかったのか、彼は「はぁ?」とピクリと片方の眉を動かせた。
「そんな、私が幸澤先生の車から出てきたら不自然でしょう!?生徒や他の先生たちに誤解されたらどうするんですか!」
「誤解されてもお前が俺んち泊まったのは事実だろ」
「そ、そうですけど……何も考えずにそんないい加減なこと言うのやめてください!」
そんなことなったら私だけじゃなくて幸澤先生にも被害が行くのに、どうして彼は自分のことをそんなに軽く考えてしまっているのだろうか。そこがいつも許せない。
彼はどう見ても"いい"先生なのに、それを自分で無下にするなんて。
「それに、私と幸澤先生は誤解されるような関係ではないです」
「……」
私がそう言うと一気に空気が緊張したのが分かった。