いい加減な恋のススメ



ていうかこの人、まだ生徒に呼び捨てされてるんだ。確かに私たちの時代から幸澤先生は呼び捨てで呼ばれていたけれど。
この人も大変だなぁ、と見つめていると不意にそんな彼と目が合い、そして彼は面白そうに笑うと、


「そうそう、安藤先生は俺が前の学校で働いてた頃の教え子なんだ」


と腕を組ながら言うと教室の動揺をかっさらった。私はそれを頭のどこかからか聞いていながら、「コイツやりやがった…」と頭を悩ました。
あれだけ言わないでほしいと言ったのにどうしてこの人は約束を守ってくれないの。いいや、いい加減なこの人に約束なんて守れる筈がなかったのだ。


「幸澤先生!それは言わないって!」

「えー、なんでー。別に言っても悪いことじゃないだろ」

「っ……」


それはそうだけど!幸澤先生から私の情報が変なことに広がったら溜まったものじゃない。
もう本当に最悪だ、と頭を抱えていると目の前の席の女の子が「安藤先生、安藤先生」と声を掛けてくれた。


が、


「安藤先生は彼氏はいるんですか?」


来たよ。やっぱり来ると思ってたんだよね、この質問。



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