いい加減な恋のススメ










「おい、何かデジャヴなんだけど」


そう振り向いた幸澤先生は10m先にいる私に呼び掛けた。


「今日はもう幸澤先生には絶対近付きません」

「あーあ、自分のお仕事私情で投げ出しちゃった。社会人失格だね」

「っ……」


五月蝿いですよ!、と私は反抗するように声を上げた。
教室へと向かう途中、いつかと同じように彼との距離を取る私。だけど前回とは理由は違っていた。
彼のことが目に入ると昨日の夜のことが思い出されて仕事どころじゃない。頭がそれで一杯になってしまうのは恥ずかしいことだが。

それに朝も喧嘩しちゃったから色々ときまずい。


「意地張ってないでこっち来なさい。前も言ったけどそうしてる方が周りから可笑しく見られてるからな」

「……」


確かに幸澤先生が言っていることは正論だ。
それに弱い私は仕方無しに彼へと近付いた。勿論ちゃんと距離は空けて。

そんな私に呆れると幸澤先生は教室のドアを開けた。


「拒まなかったくせに」


そんな言葉を捨てるように言って。



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