いい加減な恋のススメ



教卓に立っている彼を見るだけで憂鬱になる。どうして私は彼ただ1人だけでモヤモヤしたりしてしまうんだろう。


「で、一応被服室を借りれるようにはなったから」


幸澤先生のその言葉に生徒たちは落胆の声を漏らす。


「視聴覚室じゃねぇのかよ!音流せねぇじゃん!」

「何かもう他のクラスが映画放送すんだと」

「幸澤役立たねぇな」

「すみませんねぇ、ここじゃまだ若造なもんで」


なかなか強く言えねぇんだよ、と彼はにっこりと笑いながらも目は苛々しているのが分かった。
お目当ての視聴覚室は取れなかったけれど被服室程の広さがあればお化け屋敷としては十分だろう。それにあそこには道具としても利用できるものが多いし、許可を取れば使わせて貰えそう。


「もう被服室での授業はないみてぇだし、ここにある作業道具とか向こうに運んでいいらしいよ。放課後の準備もしていいらしいし」

「お、マジか!幸澤やるな!」

「どっちなんだよ」


安藤先生も、と急に話し掛けられて「はい!」と甲高く声を上げてしまった。


「放課後、忙しいかもですけど準備手伝えるんだったらしてください」

「……」


業務連絡をしているかのような感情が入っていない声だった。


「はい……」



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