いい加減な恋のススメ



それもちゃんと把握していた私は「秘密です」と用意していた通りの返答を澄ましたように答えた。

しかしここでまた関わってくるのがあの男だ。


「そういえば安藤先生、高校3年間彼氏いたこと無かったけどずっといないんですかー?」

「っ……」


その幸澤先生の言葉に周りの生徒たちがまた声をあげる。あぁもう、この人のせいで初っぱなから私の予定がずれ始めてる。
ていうかこの人私のこと覚えてないって言ってたのにそういうことは覚えてるんじゃん!なんなんだこの人!


「幸澤ー!お前安藤先生とか狙うなよー!」

「狙うなよー、って……元教え子の教育実習生に手を出すほど胆座ってねぇっつーの」


こっちだって願いさげだっつーの!、とは言ったら私の性格の裏のほうがバレてしまうのでその場はニコニコと微笑んで流した。この人のせいで私がどれだけ苦しめられたか知ってるのか少年たちよ。


「あと安藤先生、こう見えて直ぐ怒るからお前らも気を付けろよ。俺もさっき他の先生方がいる前で説教されて参った参った」

「っ……」


コイツ……

幸澤先生は満足そうに顔を綻(ほころ)ばすとしてやったりと私に向けて舌を見せた。この人、本当に私の年上なのか。



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