いい加減な恋のススメ
それがどういう意味かなんて分からないとでも思っているのだろうか。
彼を許してしまった夜のことを思い出し、私は顔を赤く染める。すると彼はそれを見てふっと真顔に戻り、そして少しずつこちらへと顔を近付けた。
彼のゴツゴツした大きな手が私の頬に触れる。私は首に力を入れて、彼の思い通りに動かないように首を固定した。
嫌だこの前みたいなことは2度としたくない。彼からしてみたらこんなこときっとただの遊びなんだ。
彼は結局1番大事なことを何も教えてはくれない。
彼にとって、私は一体なんなのか。
「……やめてください」
私がそう言うと頬に添えられていた指の力が弱まった。
「私のこと、からかうのもうやめてください」
「……安藤」
「今日はもう失礼します」
意外にも簡単に彼の手からは逃げられた。私は彼のことをキッと睨むとその隣を通って教室の外へと逃げ出した。
ガララッと勢いよく扉を閉めてその扉に背中を付ける。深呼吸をしてもその心臓の高鳴りは止むことはなかった。