いい加減な恋のススメ
彼のことになると気持ちが乱れる。何も手に付かなくなる。いつも苛して、憂鬱になって、気持ちが晴れなくて、
そんな気持ちになるぐらいなら、
角を曲がる直前で突然出てきたその人にぶつかった。私の体をしっかりと受け止めてくれたその人物の顔を見るとドクンッと体が脈打つのが感じられた。
「大丈夫ですか、安藤先生」
「……」
小田切先生は私の肩を支えると怪我がないかと心配そうに私の顔を覗き込んだ。
なんて最悪なタイミングなんだって思った。こんなときに小田切先生に会ってしまうなんて。
私の中で何やら黒い感情が溢れ出した。止めようにも止められなかった。駄目だと分かっていても無理だった。
いつもの私なら、絶対こんなこと考えなかっただろう。
何も話さない私を不思議に思ったのか、「安藤さん?」と素の方の呼び方をする小田切先生の手を掴んで握った。
「告白の返事してもいいですか」
口が勝手に開いた。駄目だ、こんなにいい人にこんなこと言っては駄目なんだ。そんなの全く経験がない私だって分かる。
だけどそうでもしないと私はこの大きな矛盾に自分が押し潰されそうだったから。
「よろしくお願いします」
これでいいんだって、何回も自分に言い聞かせた。