いい加減な恋のススメ
私のことも見て?
「なんか幸澤って格好よくない?」
その時は誰が言い出したかなんて覚えてなくて、ただの昼休みの話題の1つだったと思う。
「えー、いきなり何?」
「普通に考えてさ、あれだけ格好いい顔の人いなくない?」
「顔かよ」
「それだったら真中先輩の方が格好いいって」
「まぁ、でも私たち関わりないじゃん」
「確かに」
泉もそう思わない?、と言われて思わず「え!?」と声を漏らす。この手の話題にはあまり入りたくなかったため大人しくしていたのだがそこに目をつけられてしまったらしい。
私はそのときクラスでも目立つようなグループにいて、ガリ勉だったけどなるべく明るいキャラで通っていたのもあったからか、周りの視線を意識してしまう。
「そう、かな……」
「ていうか泉ってよく幸澤と話してない?」
「話をしてるだけ」
「何の話?」
「勉強」
「真面目か!」
そうやってツッコミを入れられるのが日常茶飯事っていうか、私のキャラでもあった。
ていうか何でこんな話になったんだっけ。あぁ、そうだ。
「でも幸澤ってウチらの何個上よ」
「だよねー、年上と付き合っても介護大変じゃなーい?」
「どこまで先のこと考えてるの」
「とにかくさ、顔はいいってこと~」
「……」
確かにこの頃の幸澤先生はまだ若くて生徒の誰よりも格好良かったかもしれない。