いい加減な恋のススメ
するとそう言っていた友人が「あ、」と顔をしかめた。彼女が見つめている視線の先に顔を向けた。
「まーたいるよ、皆川のやつ」
「本当に幸澤にベタベタしてるよねー」
「生徒から好意向けられるのって教師からしたらどうなんだろうね」
「喜んでたらキモ」
同じクラスの皆川さんという女の子は彼に気があるようで何かあれば彼に伝えている気がする。
彼も相手は生徒だからいつものように接しているけれど、私は暫くするとその2人から目を離し、そして机の中に入っているファイルに触れた。
放課後、私は彼の姿を探す。本当は教室で渡したかったけどお昼のことがあった手前、皆の前で話すのは気が引けてしまった。
しかし、何で私の方が気にしてしまっているんだろう。
職員室にはいなかった。顧問であるバスケ部にも行ってみたけどいなくて、結局のところ教室に戻ろうとしたらその背中を見つけた。
「幸澤!」
私がそう呼ぶと向こうはズルッとずっこけた。
「お前なぁ、呼び捨てはすんな呼び捨ては。職員室ではちゃんと呼ぶくせに」
「周りに人がいるから」
「生意気」