いい加減な恋のススメ
たまに皆川さんみたいな人を羨ましく思う。私には天真爛漫な笑顔も、ああやって人懐っこくすることも出来ないから。
人より優れた能力も持っていても、私はそれを捨てても、他の人のことをいいなって思う。
なんて、
「何でそこまで幸澤に拘るかねー」
「拘ってないよ、向こうがいい加減で怒っているだけ」
「あれだね、幸澤は日本史じゃなくて数学とかだったら泉のことを高評価せざる負えなかったんじゃない?」
「それだ!」
と、言ってもそんなの無理なわけで。
杏は話に興味がなくなったのか欠伸をし始めた。もういいや。
と、
「これ、次の授業の時使うプリントだから誰か先配っといてー」
私の大嫌いな声がする。クラスにいた全員が教卓の上にプリントを置きに来た幸澤先生の方を見た。
この時はまだ皆川さんが幸澤先生に振られたという噂が回っていたから全員が全員、とても気まずく感じただろう。
幸澤先生はそんな周りの視線に「え、何?」と困ったように笑った。
そして彼は不穏な空気を感じたのか、そそくさ教室から出ていこうとする。
私は席から立つと出ていってしまった彼のことを追った。先程返して貰ったレポートを持っていた。
「幸澤!」