いい加減な恋のススメ




と、


「あれ、安藤先生」

「小田切先生!」


ひょこっと職員室から顔を出してきた小田切先生は地図を見ている私に「何してるの?」と話し掛けた。


「美術室行きたいんですけど、」

「あ、僕も行くんで」


校舎の1番東側なんですよ、と言われて歩き出した彼についていく。
最近、小田切先生の側にいると胸が苦しくなる。これは決して彼に感じるようなものではなくて、ただ申し訳なくなる。

ずっと謝りたいけど、それが言い出せない。


「ウチも看板を書くらしいんですけど筆が足りなくてー、それで借りようって思って」

「……」

「安藤さん?」

「え?」


ボーッとしてる、と優しく頬に触れた小田切先生の指は温かかった。あ、やっぱり言えない、そう思った。
私は「何でもないよ」と笑う。


「もう文化祭だね、てか実習も終わるし」

「寂しいね」

「そうだね、何だかんだ毎日会ってたし」


彼はおかしいようにケラケラと笑った。まるで本当の高校生みたいだ。
廊下に出てまでも作業をしているせいてたちを横目に見ながら、私たちは美術室へと向かう。




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