いい加減な恋のススメ
「すみません、道具の貸し出しは出来ないんです」
ペコリと頭を下げられ、私たちは廊下へと出た。
隣に立っていた小田切先生は「うーん」と首を捻る。
「まぁそうだよね、普通に考えて。だって彼女たちだって部費とかで道具買ってるのにそれを使われて、しかも返ってこないなんてことがあったら困るもんね」
「そ、そうだね」
常識的に考えたらそうだ。なんで私もっと早く気が付かなかったんだろう。
小田切先生の言葉を深く受け止めながら、私ははぁと溜め息を付いた。結局買わなきゃいけないんだなぁ。
「安藤さんは文化祭のとき何してるの?」
「ん?」
急に話しかけられたから返答に困った。
「えっと、何してるんだろう。1日中クラスにいるってことは無いだろうけど」
「それじゃあ一緒に回らない?」
「え、」
「俺午後からちょっと暇なんだよね」
それは素敵なご提案に思えたけど2人で歩いたら流石に他の生徒とか先生たちから誤解されてしまいそうな。いや、誤解されて困るような関係ではないんだけど。付き合ってるから。
「だけどさ、折角今度の土曜日で実習最後だし、その記念に一緒にいたいなって」
「……あ、」
こんなこと言われて、しかも小田切先生に、断れる人なんてこの世にいるのか。