いい加減な恋のススメ
ハッと我に返ると私は頭を振った。
あの人はもう関係ないんだから!気にしない!
そうだよ、あの人は……
あの人は、元教え子の私のことをセフレとかいう最低人間だもん。そんな人のこと考えると本当馬鹿みたい。
「(馬鹿だなぁ……)」
あのとき、もう分かったじゃないか。やっぱり彼の目には私は映っていなかったって。本当はずっと私の気持ちに気が付いてわざと気が付いていない振りをしてたのかと思ったらそうでもないし。
だから、やっぱり何も無かったんだよ。
もう少しで実習が終わる。そうしたらもう彼とは会うことはもうないだろう。これでやっと彼から解放されるんだ。なんて幸せなんだろう。
もう、彼のことで頭を悩ませなくてもいいんだよ。
私は実習のノートの上に俯せた。モヤモヤモヤモヤ、ずっと胸の奥が気持ち悪くて頭が痛くなる。吐き気だってする。
早く終わってほしい、いや、生徒たちと離れちゃうのは寂しいけど。でもそうしないともう手遅れになりそう。
何が?
「(何が、手遅れだよ……)」
本当の本当は、もう手遅れだとかそうじゃないとか、そういうのじゃなくて。
本当の私は、そう、彼と初めて出会ったときから走っていた。
走ってたんだ。