いい加減な恋のススメ



いつの間にか私の字じゃない文字が書き込まれている。それも1つだけじゃなくて、他のページにも。


「(これって……)」


私の授業する内容へのアドバイスらしい文字は線が細くて、そしてとても達筆だった。私が彼の字を見間違える筈がなかった。だって、ずっと見ていたからだ。
ペラペラと他のページにも目をやると、それは次回の授業の内容にも書かれていて、ノートを持っていた手の力が強くなった。

いつ?私が寝ていた間に?何で起こしてくれなかったの?バレたくなかったから?この前のことで気まずかったから?

分からない、けど。


「何で……」


私の高校時代を彼抜きで考えるのは難しいだろう。ずっと、見ていた。ずっとずっと、3年間、彼のことばかり見ていた。駄目だって分かっていても、心が彼を見つめてしまっていた。
それなのに彼の態度はいつも冷たくて、素っ気なくて、いい加減で、そうだから悲しくなるときもあって。

だけど、本当は気付いていたんだ。

彼はそんな中にもちゃんと生徒として私のことを見ていてくれた。他の子との接し方は違っていたけれど、優しさは不器用ながらもあった。
そんな彼を憎むに憎めなくて、追いかけて、追いかけて、ここまで来てしまった私は相当……



 
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