いい加減な恋のススメ
ノートを閉じると1番前に大きな付箋が張っており、その中に今までで1番大きな字で書かれていた。
【黒板字でっかく書けよ!】
―――「ちげーって、お前の文字ちっちゃくて見えにくいんだよ」
それはきっとノートに書かれていた私の文字が小さかったことへの皮肉なのだろうが、その時の私は昔のあの事を覚えていてくれているもんだとか勘違いしてしまって、何だか嬉しかった。
本当は気が付きたくなかった。ううん、気が付いていたかもしれないが、ずっと見て見ぬ振りをし続けてきた。
気が付いてしまったら、きっと悲しくなるから。
だけど、これを見てこんなにも嬉しくて、気持ちが踊ってしまうなんて、もう自覚するしかなかった。
ずっと見ていた。けれど見ていた分彼の目にも映りたかった。
映りたくて映りたくて仕方がなくて、色々試したけれどそれでも駄目で、彼に近付こうとしようと思えばするほど、彼が離れていっているように感じた。
―――「まぁ、有り得ねぇけど」
冗談でもああ言われたとき、彼は私の気持ちに気が付いているんじゃないかと思った。
そして、牽制してるんだってことも分かった。