いい加減な恋のススメ










深呼吸を5回程繰り返した。しすぎ?いやいや、それぐらい緊張していた。
教室の前に立っているだけで足が重くなって、自分の体のバランスが分からなくなる。今はなんとか立てている感じ。

あー、私の緊張しいなの治して誰か。

私は扉を開けると真っ直ぐ進んで教卓の前に立った。やはり足は鉛のように重くなっていた。


「あー、泉ちゃんいつもよりもメイク濃いー」

「っ……そ、そんなことないよ」


生徒の何気ない言葉に遅めにレスポンスを返す。あぁ、緊張してるのバレバレだよね。
すっと前を見ると10人ぐらいの先生たちが並んでいた。その中には雨宮先生もいて、彼はこちらを向いて微笑んでいてくれていた。かなりお世話になった先生だ。

私は授業が始まる前に机の上に印刷したプリント等を並べる。これを配るタイミングも確認した。

あとは……

私はノートのあのアドバイスのことを思い出すと教室内に目を配らせた。
すると横の入り口から遅れて彼が入ってきたのを確認すると少しの間教卓の前を離れる。


「幸澤先生!」


私がそう声を掛けるとき、彼は後ろ手で扉を閉めていた。



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