いい加減な恋のススメ
折角頑張って勉強してこの日を迎えたと言うのに。
こんなことになるなんて考えていなかったから自業自得だと思うけど、それでもやっぱり悔しくて涙が出てきた。
乾いた風邪が強く吹いて私は体を震えさせた。それ以前にここにいたら風邪を引いてしまいそうだ。もしこの高校が駄目になっても残された試験に風邪で受けれなくなってしまったりしたら大変だ。
こんなときにまでそんなことを考えてしまう私は、やっぱりある意味頭が固いのだと思いながらマフラーを巻き直した。
と、
「どこの学校?」
不意に声が掛かって顔を上げると、そこにはバイクに股がる男性が立っていた。
彼は自分の頭からヘルメットを取ると緩くパーマが架かった黒髪とその素顔を表す。
若い男性だった。
「あ、城南中学です」
「中学校じゃなくて受験する高校」
「え?」
「えって、受験生じゃないの?」
違う?、と彼は私を怯えさせないようにか優しく微笑み掛けた。
突然の出来事で戸惑う私はぐるぐると色々なことを考えながらも彼の言葉を理解し、声を出す。
「館山高校……」
「お、マジで。偶然だなー」
目的地一緒、と彼はバイクから降りてきた。