いい加減な恋のススメ
彼は「どーぞ」とヘルメットを私に持たせる。え、え?これって?
「あ、あの……」
「バイクから振り落とされたら頭割れて大量出血だぜ。まぁ、それ以前に落ちたら死ぬけどな」
「……」
どうやら私はこの人のバイクに乗るらしい。でもヘルメットを私に渡したら彼のものが無くなってしまうのではないか。
しかしその問題は直ぐにでも解決した。
「あぁ、それ彼女用のだから。気にすんな」
私は彼に体を持ち上げられて後ろに乗せられた。ていうかさっきから度々持ち上げられてるけど結構恥ずかしい。
「足開いても平気?大丈夫?」
「あ、はい……でも……」
血が、と私はバイクに付いてしまうのじゃないかと心配するが彼は「気にすんなって」と明るく笑った。
そしてヘルメットを被ると彼もバイクに股がる。
「さってと、行きますか。しっかり掴まってろよ。振りじゃねぇぞ。時間的に結構飛ばすから」
「こ、交通規則だけは守ってください!」
「はは、なんだお前。真面目なヤツだな」
エンジンが掛かる。勿論バイクに乗るのは初めてだったから心臓が破裂してしまいそうなぐらい緊張した。バイクの2人乗りって大丈夫だっだっけ!?、とずっと頭の中で考えていた。
動き出した瞬間、彼の腰に手を回して強い力で抱き締めた。