いい加減な恋のススメ
再会は思っていたよりも早くやってきた。
高校初めての日本史の授業。
「このクラスの日本史を担当します。まぁ、新しい場所で勉強していくのは緊張すると思うけど俺はそんなに怖くないから安心して」
そう挨拶した彼は間違いなくあの時に私を助けてくれた"幸澤先生"だった。
もしかしたら新年度はこの高校にいるのだろうかと心配していた。若い先生は毎年転勤しちゃうような偏見を持っていた私は彼の姿を見たとき、ちょっとだけ泣きそうになった。
そして胸が焦がれる思いがする。
「じゃあまず、直ぐには覚えらんないけど読み方確認したいから1回全員の名前読んで行くわ。呼ばれたら大きな声で返事してね。安藤泉」
彼に見とれていた私は一瞬自分の名前が呼ばれているとは思わなくて、もう1度「安藤泉」と呼ばれてやっとのことで気が付いた。
「は、はいっ!」
慌てて返事をするとクラスからクスクスと笑いが漏れた。だけど私は今そんなところではない。
呼ばれた、名前。私、今あの人と目が合っている。
教室で1番左の端にいる私を見つめる彼は暫くした後ニコッと笑った。
と、
「いいお返事ー」