いい加減な恋のススメ



この人、彼女いるんだっけ。何で覚えてなかったんだろう。
ていうか私は彼の生徒だ。教師が自分の生徒のことを好きになるわけがないじゃん。何言ってんだろう。当たり前のことなのに。

私、何してるんだろう。本当。

悔しくてとか、悲しいとか、そういうのじゃなくて、

ただ、ぽっかりと胸に穴が空いた。






「(だけどね、)」


今ならそれが私には分かるんです、先生。
あの時、私がどうしたかったか。どうして欲しかったのか。

今なら、はっきりと。


チャイムが鳴ると同時に生徒たちが立ち上がる。

起立、礼。


「(終わった……)」


こんなに長い1時間を感じたのは初めてだったもしれない。完璧だとは言えないけれど、でも何とかなった。何とか事故なく終わらせることは出来た。
数少ない拍手に頭を下げると次の授業の準備もあるために教室を出ていく。

教室から出た瞬間、気が緩んで足の力が抜けそうになったけど何とか立て直して職員室へと足を進めた。



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