いい加減な恋のススメ
なんていい人なんだろう。
「安藤先生はここが母校じゃないんですよね?」
「は、はい」
「何か困ったことがあったら言ってください。この学校のことはよく知ってますから」
「っ……よろしくお願いします!」
そしてこの気を遣える善良さ。皆にも見習ってもらいたい。というか、素敵男子の見本ではないだろうか。これでは顔が良くなくても好きになってしまう人はいそうなのにその顔もいいなんて、悪いところ無しなのが凄い。
誰かさんと大違いだ。
「おい、安藤」
そう、誰かさんとは……
「なぁ、聞こえてんの?安藤」
「先生」
「……はぁ、はいはい。あ、ん、ど、う、せ、ん、せー」
「なっ……」
後ろから声を掛けた幸澤先生に心の中で溜め息を吐いた。我慢しなきゃ、今は上司なんだから。
しかしどうして小田切先生と話しているときに話しかけてくるんだろうかこの人は。教師なら空気を読むぐらいのスキルがあっても可笑しくないじゃないか。
「あ、幸澤先生おはようございます」
「小田切おはよう。あ、小田切先生おはようございます。今日も好青年お疲れさまです」
「……?」
「あのっ……」
私が口を挟もうとすると彼がジロッと私の方を向いた。どうしてそんな目をするんだ、話し掛けてきたのはそっちじゃないか。