いい加減な恋のススメ



―――「勿体無いよ……」

「勿体無い?」

「だって凄くいい人なのに……」

「その"いい人"止まりなのかもしれないね」

「……」


実習が始まって直ぐの飲み会だっただろうか。彼がこんなことを言っていたのを思い出して胸が苦しくなった。
彼に別れを告げてしまった私が言うのはなんだけど、小田切先生はもっと自分に自信を持ったらいいと思う。それぐらい素敵な人なんだから。

だから、私には勿体無さすぎる。

彼は「さぁ、帰ろう」と駅前のベンチから立ち上がると荷物を肩に掛けた。


「安藤さんはどうするの?」

「私は電車で」

「そうじゃなくて」


そうじゃなくて?


「幸澤先生のこと、どうするの?」

「っ……」


そこまで見透かされていたなんて、もう小田切先生には隠し事は出来ないななんて思った。
ずっと迷っていた。小田切先生には彼への気持ちがあるのに付き合うなんて無理だって別れを告げる決心は直ぐに出来た。だけど彼へこの気持ちを伝える勇気は出ない。

私はこの先、彼への気持ちをどうすればいいんだろうか。



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