いい加減な恋のススメ
「この頃地方を支配してのが国司ってやつらで、まぁ偉いやつらなんだけどちょっとサボり魔なんだよ。こいつら基本は都にいるんだけど」
「いちいち自分が支配してる地方の国行くの面倒だろ?だから代わりの人を送ってソイツに荘園を支配させんの。なのに手柄は殆んど国司のもん」
「そういう国司のことを遙任って言って、それで遙任が送ったやつらの役職を目代っていうの」
「……」
頭の中が、まだ彼の声で満たされてる。彼の声も顔も性格も嫌いなのに彼の授業は楽しく感じてしまうのは何でだろう。いつもは聞きたくない!って思ってしまう声なのにとても聞きやすいんだ。
矛盾しすぎというか、でも今日彼の授業についていって、彼の授業を前とは違う形で聞いて、何よりも彼の授業では生徒たちが楽しそうにしているのだ。彼は成績がどうだとかあんまり気にせず授業をしている。大事なのはよく理解できること、そして楽しんでもらうこと。
「(日本史教えてくれてるあの人は嫌いじゃないかも……)」
でも彼の日本史でいい思い出がなかったのを思い出してそれが一気に充満したように気分が下がった。
職員室で帰る準備をしていると川西先生が「いーちゃん!」と、
「今日飲み会行くよね?一緒に行こ?」
「はい」
何だかもやもやするなぁ。晴れればいいんだけど。