いい加減な恋のススメ



「日本史出来るって凄いよね、俺はずっと苦手だったなぁ。だからずっと運動ばっかしてたのもあるけど」


小田切先生は一人称が「僕」から「俺」に変わった。きっとこっちが素なんだろう。
でもそうやって仕事とプライベートを分けられるのって何だか格好いいと思う。なんて、どんどん私も染まってきているようだ。


「どうして安藤さんは日本史?」

「っ……えっと、ただ好きだってこともあったし、高校の頃1番勉強に励んでた教科だから自信があったというか」


嘘でも絶対「あの人への対抗心です」なんて言えない。しかし今思えば幸澤先生がもし日本史じゃなくて他の教科の担当になっていたら、私もまた違うその教科の先生になろうとしてたのかな。相当あの人に人生狂わされてないか?


「安藤さん真面目そうだもんね……」

「……そのせいで今まで全く色恋沙汰に巻き込まれたこともないんですけど」

「え、いないの?」

「へ?」

「彼氏」


普通に「はい」と答えれば彼は暫く黙ったあと「そっか……」とジョッキに残ったお酒を煽った。
そんなこと考える暇なかった。ずっと夢が公務員で、それになるには寄り道している暇はないと思っていたから全く周りの男の人なんて見てなかったかもしれない。何かあったとすれば高校、大学で秀才くんに目を付けられてよくライバル宣言されたことぐらいか。

本当私って青春という言葉が似合わない人生送ってきてるかも。



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