いい加減な恋のススメ



え、と声を漏らしたときには小田切先生は私の方を向いてはおらず、店員さんに「パインのサワーください」と頼んでいた。
私の彼氏?彼氏って彼氏だよね?辛子とかの間違いじゃないよね。え、小田切先生私の彼氏になりたいってこと?

私が選んだ答えは苦笑いだった。


「小田切先生、酔ってます?」

「……」


そう聞くと彼は爽やかそうな顔からは想像が出来ないくらいの妖艶な表情を見せた。


「安藤さんさ、」





そう彼が何かを紡ぎ掛けたその時、


「これ烏龍茶?」


そう耳元で囁かれたと思ったら真後ろから骨ばった腕が伸びてきて私が持っていたジョッキに触れた。
その拍子に後ろを振り返ると「あ、」と声を漏らす。


「何飲んでんの?」


幸澤先生は私と小田切先生の間から声を掛けた。


「こ、幸澤っ……先生……いつから」

「今。それより質問に答えろよ」

「っ……こ、これはどこからどう見ても烏龍茶です!」


私が烏龍茶を彼に近付けると「ふーん」と言って立ち上がった。
吃驚した、この人もしかして人を後ろからしか話し掛けられないの?いきなり来られると困る。


「お、お酒飲んでると思ったんですか?私もう成人してます!」

「そーだけど。なんか元教え子だったお前が酒飲んでるのあんまりよろしく思わないっていうか」

「っ……いつまでも子供扱いしないでください!」

「へいへい、ちょっと気になっただけです」


安藤先生、と言うとまた彼は私の頭を1度触ってからその場を離れた。こんの、セクハラ教師!



< 30 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop