いい加減な恋のススメ
ヤキモチの妬き方
「泉ちゃんは本当に真面目な子で、クラスの係りなども進んでやってくれたりととても感謝しております。
こんな素敵なお子さんの担任になれるなんて教師冥利に尽きますよ」
小学校4年生の時、担任の先生がそう言ったときに隣にいた母が「家ではそんなことはないんですけど」と言い返したことに頬を膨らませた覚えがある。
確かに学校では真面目を演じてきた。授業に積極的に参加して、演奏会なども指揮を担当したいと言ったり、そしてそれでも友達からは孤立しないように話についていったり。
遂には他の友達のお母さんたちからも「泉ちゃんを見習いなさい」と言われる。
「とても優秀な成績です。本当に将来が楽しみですね」
その三者懇談の帰り、母は私に尋ねた。
「泉は将来の夢ある?」
「公務員」
「こっ……」
よくそんなことを知ってたね、と母は吃驚したように言う。
「お父さんが安定してお金稼ぐのには公務員になれって言ったの。こんなパパでもなれたからって」
「……」
「安定した仕事に就いて、それでいい保険に入れるようにお金貯めなきゃ」
「……あの人の言うこと何でも信じちゃ駄目。それから女の子はそんなこと考えなくてもいいんだよ」