いい加減な恋のススメ
でも、女の子だからってしっかりしてなくてもいい理由にはならないだろう。それに余計しっかりしていないと女の場合は取り返しのつかないことになってしまうから。
更に私は駄目な人間の例を間近で見てきている。
それはウチの兄2人なのだが。
「葵くんは頭がいいけど人とコミュニケーションを取るのが極端に苦手だから駄目でしょ?昴くんは人と関わるのが得意だけどスッゴい馬鹿だから駄目。
だから私はその両方のいいところを取って1番自立してみせるよ」
今思えばなんてマセ餓鬼なんだと思うけど、あの頃の私にとってこれは当たり前のことだとばかり思っていたから特に可笑しくも思っていなくて、その考え方のせいで色々なものを犠牲にはしてしまったけど結構満足した結果をもたらしている。
「任せてお母さん、スッゴいいい女になってお母さんとお父さんのこと養うから」
あれから10年近く経った。そして今、私は人生最大の壁に激突している。
ごめんなさいお母さん、私はついに華の公務員人生から道を逸れてしまったようです。
「体だけは大人になってんな」
生まれて初めて、こんな屈辱を受けた。
「ふっざけんなー!」
「うお、」
私は彼に凄まじい勢いで掴み掛かると体を揺する。
「私のことからかうのもいい加減にしてください!」
「からかうって何が」
「私と貴方がそんな関係になるわけないんですよ!絶対ないんですよ!」
「わー、そこまで言うー?酷いー」
「そ、その言葉遣いも全てが受け付けないんですよ!」
「はいはい、分かったからとりあえず退きなさい。はしたないよ」
「は……」
はしたないと言われ、自分の体勢を見返してみると私は裸のまま彼の体の上にのし掛かっていた。
うぎゃあ!、と跳ねるように彼から再び離れる。怒りのあまりに今の自分の格好をすっかり忘れていた。彼から「安藤先生大胆ー」なんて言われる始末。
「と、とにかくどうしてこんなことになったかを説明してください!」
「はぁ、朝から頭回んねぇ」
「幸澤先生!」
「……」
私が物凄い低い声でそう呼び掛けるとこれ以上はヤバいと察したのか、彼は「分かったよ」と声を漏らした。
「お前何か途中から酒豪のごとく飲みまくって潰れたんだよ。そしたら家は俺と同じ方向だって他のやつが言うからお前のこと頼まれたんだよ」
「う、嘘だ……」
まさかお酒にこんなに弱いなんて。あの時を自分を呪ってやりたい。
私が疑い深い目をしていたからか、彼は「本当だって」と呆れたように言った。