いい加減な恋のススメ



「タクシーで帰ろうとしたら金ねぇし、お前電車乗れる状態じゃねぇし」

「……」

「家も言えねぇから取り合えず一晩何処かで過ごそうと」

「な、何でここ……」

「あー……」


何だ、昨日の夜本当に何があったのか。私は思わず前のめりに彼の言葉に耳を傾けた。
すると幸澤先生は何て言おうか迷った挙げ句、結局は超直球で私に伝えてきた。


「お前がホテルホテルうるさかったんだよ」

「ほ!?」

「俺もお前連れて帰んの面倒くせぇし、取り合えずここにぶちこんだ」

「あ、あ……」


どうしよう、言葉が出てこない。というか、衝撃のあまりどうやって言葉を発するのだろうと忘れてしまったという方が合っているだろう。
何か言い方を替えようとしたが思い付かず、面倒くさくなってそのまま言ってしまうところが彼のいい加減さをよく表している。


「嘘だ嘘だ嘘だぁあぁあ!」

「まぁ、信じるか信じないかはどっちでもいいけどよ」

「嘘だっ……うぎゃぁあ!!」


急にベッドから出た幸澤先生に声を荒げると慌てて目を逸らした。もちろん下に何もつけていないからであるけども。
こ、この男デリカシーがないの?ないんだな!絶対ないな!この野郎!



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