いい加減な恋のススメ
え、私この人の声聞いたことある。慌ててその教育担当の顔を見てみるとやはり1度は見たことがあるような顔をしている。
私は失礼ながらその顔をじーっと見つめ、自分の記憶と照らし合わせた。私より10歳程歳上、それから緩くパーマを掛けた黒い髪の毛に高い背丈。顔は恐ろしいほど整っているその人。
―――「お前、本当に何も分かってないんだな」
ピンと来たと同時に隕石級の衝撃が私を襲う。どうしてこの人がここにいるんだ。
「こ、幸澤(コウサワ)先生……」
「お、やっぱり安藤か」
驚く私を見て幸澤先生は軽く「久しぶり」と声を掛けた。すると隣にいた小太り先生はそんな私と幸澤先生を見合わせて、「お知り合いですか?」と幸澤先生に語り掛けた。
「俺の前の学校での教え子ですよ。1度担任もしたことがあります」
「え、そうだったんですか!」
やめてぇえぇえぇっ、全然その説明は間違ってはいないけれどそんなこというのやめてぇえっ!!
和やかに小太り先生と話す幸澤先生に私は声には出さずその事を必死に訴えると、
「なるほど、俺が担当するのって安藤のことだったのか。それはやりやすくて助かるよ」
「……」
そう言って彼はニッコリと笑ったと同時に私の中で地獄のゴングが鳴った。