いい加減な恋のススメ
なんなのよ、あの言い方。まるで私のことを苔扱いして……
シャワーを浴びているようで、部屋の向こうから水の音が聞こえてくる。
私は今度こそベッドの下に散らばってある自分の服を拾い集めた。まさかこの服も彼に脱がされたのではないかと考えると動揺して取り損ねた。
幸澤先生が言っていることは本当だろうか。普段いい加減な男だから言ってることも事実なのか分からない。
それでも付き合ってもいない、それも元担任の教師だった男とこんなところに来ているということだけで私は事実どうにかなってしまいそうだった。
しかも、あの幸澤先生となんて……
誰もが私の将来を楽しみだと言った。私だっていつも目標を見失わないように理想の自分を掲げ、そしてその道にふさわしい人間として歩いてきていたのに、どうやら私はその人間がしてはいけないことをしてしまったらしい。
自分の中の方針とは異なるそれを、私は受け入れられなかった。
服を全て着替えると慌てたように煙草の香りが残るこの場所から離れた。時間を見たら5時過ぎだった。
ホテルを出たら今自分が何処に立っているか分からなくなったけど、ここが駅の直ぐ近くだったことに気が付くと何とか電車に乗って家まで帰ることが出来た。