いい加減な恋のススメ
「はい、これでいいよー」
「……消えてる」
川西先生の隠しテクはなかなかのもので、さっきまで私の肌の上で異彩を放っていたあのキスマークはどこへやら。すっかり綺麗に消えてしまっていた。
そういえば、朝シャワー浴びたとき自分の体全然見てなかったもんなぁ。
でも、こういう痕が付いているってことは……やっぱり私あの人と……
「で、幸澤先生どうだったの?」
「し、知りませんが!」
「今更遅いよ~」
何とか川西先生の魔の手から逃れようとお手洗いの外へ出る。すると前を見ていなかったからか、出た瞬間に前を歩いていた人と体がぶつかった。
条件反射で「ごめんなさい!」と謝ったがその人の顔を見た瞬間に言わなきゃよかったと後悔した。
「何、その顔……」
「……」
今この世で会いたくない人ナンバーワン、幸澤先生だ。 しかもムカついているのとあれからまだ数時間しか経っていないのに気まずさとキスマークの件で全然顔が見れない!
「お前は人様に挨拶も出来ねぇの?」
「幸澤先生もしていませんが」
「オハヨウゴザイマス、安藤先生。おらよ」
「……おはよう、ございます……」
なんでそんなにいつも通りなんですか。