いい加減な恋のススメ
校内案内するから、という理由で幸澤先生に無理矢理のごとく後ろを連れていかされる。もう、この人のせいでさっきから深い後悔が私を襲う。
もっと考えて研修先選ぶんだった。だってこの人がいるなんて思ってなかったんだもん。
「ここが1年棟。まぁ俺は1年の担当持ってないから来る必要ないし説明省くな」
おいおい、随分いい加減な省き方するな。後は私だけで勝手に確認しろってことか。
こっちこっち、と自分の道をドンドンと進んでいく幸澤先生の後ろを付いていく。校内でも文化系の部活の活動が行われているのかコーラス部の歌声や吹奏楽部の演奏などが廊下に響き渡っていた。
「幸澤先生って……」
そう言った私に幸澤先生はふと足を止めてこちらを振り返る。
「どうしてこの学校に?」
「普通に転勤だけど」
「……」
そんな、どうしてその学校が私が実習で選んでしまう学校なんだ。もうアンラッキーどころの話じゃない。
しかも、どうしてこの人が私の教育担当……いや、でも日本史担当で歳が若いとなるとこの人になるのか。
あぁ、もうこの人とは絶対会わないって思っていたのに。
「……安藤顔色悪くない?」
誰のせいですか、とは流石に言えなかった。