いい加減な恋のススメ
「え、覚えてないの!?」
「……」
声が大きい、と指摘すると川西先生は「あ、ごめーん」と声のボリュームを落とした。
「そっかー、いーちゃん凄い酔ってたもんね」
「……」
「じゃあ本当にえっちしたか分かんないのか」
「してません!」
私は少し立腹したように今朝急いでコンビニで買ったタマゴサンドを口に含む。
今日の昼食は川西先生と学校の中庭で。天気がいいからか、他にも沢山の生徒がいるのであまり大きな声でそんなことを話さないでほしい。
「でも起きたとき裸でキスマーク付けられてたんでしょ?してないって可能性は少ないと思うなぁ」
「無理矢理あの人と私をくっつかせようとするのやめてください」
「だってー」
「例えそういうことがあったとしても、あったとしても!私とあの人は何の発展もないです」
「……いーちゃんってさ」
何でそこまで言い切れるの?、と流石の川西先生も呆れたように聞いてくる。
私はそれでも強く言い返した。
「自分のことだから、分かる」
「自分のこと?」
「自分があの人に惹かれない理由を知ってるから」
「……」
この先誰かを好きになったとしてもそれはあの人じゃない。言わば彼は私の対局線にいるような男だ。
好きになるはずがない。