いい加減な恋のススメ
幸澤先生は「それじゃあ次な」と私のことを倉庫から連れ出すと椅子の上に座らせた。
一体何が行われるのかと思えば。
「俺が受け持ってるクラスは知ってるだろうけど2学年が3個、3学年が1個。3学年は抜きにして2学年の授業を最後の週で担当してもらう」
「っ……」
そう、いつもいい加減な彼の口からそんな真面目な内容が出てきたので吃驚した。な、なんか真剣に話してるところ久しぶりに見たかも。
そんな彼が珍しくてジッと見つめていると「聞いてんのか」と人差し指で眉間を押された。
「(な、なっ!ツンッてされた!ツンッて!)」
「で、授業数は各2つずつ。つまり3×2で6個だから。取り合えず今日はその範囲だけ教えとくから。メモ出して」
「は、はい!」
デンッと前に分厚い教科書が置かれた。しかしそれがまた私のやる気にも繋がる。
私は目標が高ければ高いほど勉強には精が出る性格だった。 もしかして彼はその事を知っていて、この話を早めにしてくれたのかな。
「ざっとこの範囲まで」
「ざっとって言われても……もっとちゃんと言ってくれないと分かりません」
「お前なぁ、別にその範囲だけを教えるんじゃねぇんだから。またここの説明をするときに他の時代の話を持ってきて分かりやすくするとかあるだろ。お前いつもそうだけど視野狭いんだよ」
「っ……」
そう言われて何かを言い返そうとしたけど正論過ぎて何も言えなかった。
そうだよね、確かに学生の試験の時はその試験範囲だけを頭に入れれば良かったけど、教壇に立つとなれば相手に教える分必ず知識が多くなる。
その様子を見ていた雨宮先生は「もう少し優しくしてあげたらいいのに」と告げる。