いい加減な恋のススメ
そう言われて幸澤先生はいつもの調子に戻り、「別にー」と、
「俺はコイツが学生の時これぐらい言ってましたから。やれる生徒を伸ばすのが教師の仕事じゃないですか」
私は彼のその言葉に「え?」と声を漏らす。やれる、生徒?
メモから顔を離し、そして彼の顔を見つめると彼は一瞬怪訝な顔をして「何?」と冷たく言った。何故不機嫌。
「やれる生徒って……」
それって、と続きを述べようとしたその時、部屋にチャイムが鳴り響いた。
『学校に残っている職員の皆さん、臨時集会を開きます。至急2階会議室に集合してください』
繰り返します、というその女の先生の声に幸澤先生と雨宮先生は顔を見合わせた。
「臨時ですって」
「やな予感、誰か問題でも起こしたかな」
「もう少しで文化祭近いのに困りますよねー」
そんな教師たちの本音を聞いたところで2人が同じタイミングで立ち上がった。私も釣られるように遅れながらも立ち上がる。
そして幸澤先生は出口へと向かう雨美馬先生の背中を追い掛けながらもこちらを振り返った。
「わりぃな安藤、今日はこれで終いだ。また明日にでも話す」
「は、はい!」
「あと別に鍵閉めなくてもいいから」
「はい!」
「……」
「……?」