いい加減な恋のススメ
彼を拒めない理由
「ほんっと有り得ない!」
私がそう言うと通話相手の杏は何も言わなかったので呆れているんだろうなって思った。
『何かあった?いや、原因は何となく分かるけどさ』
「な、何かね!?駄目なんだよね、私。あの人になると」
『……幸澤かぁ』
うっすら覚えてるわ、と言う杏に私は「え、そんな感じなの?」と問い掛けた。私の中の高校生活の記憶って殆んどが幸澤先生への恨みだった気がするんだけど。
『まぁ確かに3年間授業持ってたし、2年の時は担任でもあったけどね。私はあんまり関わってなかったし。ていうか、休み時間まで先生と関わるとか超めんどいし』
「現役の女子高生みたいだよ杏」
『それに幸澤って積極的にクラスに参加するようなことしないでしょ。困ったことあれば助けてくれるし、見守ってくれるけど。私あんまり勉強も好きじゃなかったし』
「……」
そうかな、幸澤先生って結構生徒ともコミュニケーション取る感じの人だけどなぁ。でもアレか、きっとただの先生としか思ってなかった人にとってあの人はきっとただ面白かった先生としか覚えてないのかもしれない。ていうか、私がただこだわりすぎていた可能性もあるし。