いい加減な恋のススメ
『あとアレだ!泉がこの前LINEで言ってた男も気になる』
「えっと……」
『なんか織田信長みたいな名前だった気がする』
「変な覚え方やめてよ、小田切くんでしょ」
私がそう言うと杏は思い出したように「それそれー」と口にする。って、話したって別にちょろっと名前出しただけだったのに。
『だって泉がイケメンで性格いいって男のこと褒めるの珍しいじゃん?気になっちゃうって』
「……」
『ん?なんかあった?』
言おうかどうか迷っていたが恋愛経験が全くないどころか、まさかのあの人とのことがいきなりあったような立場からじゃ判断が出来ないために、私は少し控えめに小田切先生との話をした。
『へぇ、ご飯誘われたんだ』
「でも行けなかったんだけど」
『でも誘われたってことはあっちもちょっと気になってるってことだし。もしかしたらもしかするかもね』
「そ、そうかなぁ……」
『それに断っちゃったんだったら今度は泉から彼をご飯に誘うべきだよ。その彼と仲良くなりたいんなら』
「……う、うん」
確かにそんなこと小田切先生にも言われたかも。ああいう風にドタキャンしちゃったし当たり前だよね。それに私だって小田切先生とはもっと仲良くなりたいというか、まぁいい雰囲気にはなりたいし。
本当に今日、惜しいことしちゃったなぁ。
『まぁ、本当は幸澤とどうにかなんないかなって楽しみにしてたんだけど』
「なっ……」
『気になってる人いるんなら応援するよー。鬼教官に負けずに頑張れ』
鬼教官って幸澤先生のことか。私は「おやすみ」と通話を切るとベッドの上に転がった。
何で私だけがこんなに悶々しなきゃいけないんだろう。あの人にとっては本当になんてことないことだったんだろうけど。
―――「誰か飲みに行く約束してたんだったら悪かったな」
あれって、もしかして私と小田切先生がご飯食べに行くことを知ってて言ったのかな。
でもなんかそれって……、
「(ヤキモチみたい……)」
私は起き上がると恥ずかしさで枕を壁に投げ付けた。